
映像の明るさって、何で決まるの?
カメラ撮影において、映像に大きな影響を及ぼす重要な要素は以下の5つの基本要素が挙げ
られます。
・ ホワイトバランス
・ フォーカス
・ シャッタースピード
・ 絞り(アイリス)
・ 感度
一般的なカメラ撮影における映像の明るさは、レンズを通してイメージセンサーに取り込ま
れた光の量(露光量)で決まり、以下の3つの要素で表現されます。
映像の明るさ(露光量:Ev値)=
シャッタースピード(Tv値)+ 絞り「アイリス」(レンズの明るさ:Av値)- 感度(Sv値)
つまり、
映像の明るさ(露光量:Ev値)は、 シャッタースピード(Tv値)と絞り(Av値)の組合せ
に感度(Sv値)を加味した要素で決定されます。
ここで問題になるのが「感度」です。フィルムカメラ、デジタルカメラの場合、感度はISO感
度で決まりますが、ビデオカメラなどの場合イメージセンサーの
「感度(ゲイン)」によって、
決まります。ISO感度は国際標準化機構で規定されていますが、イメージセンサーによる感度
(ゲイン)はセンサーのタイプ (CCD、CMOS又は、MOS)大きさ、画素数、
製造元などで
異なり、上記で表現した3つの要素の正しい関係が得られなくなりますので、映像の明るさは
実際の映像で確認が必要です。
「ゲイン」は、何時、使うの?
暗い映像を明るくする為にシャッタースピードを遅くする方法がありますが一般的な防犯監視
カメラ
のフレームレートは30fpsになっていますので使用するシャッタースピードの下限値は
1/30秒に制限されます(SENS-UP機能の使用により異なる場合があります) 残像対策や滑らか
な自然な動きの動画映像フリッカー対策などの目的のために使用できるシャッタースピードが
制約される場合もあります。 一般的にシャッタースピードはフレームレートと同等か2倍まで
なら自然な動きに見える動画映像になると言われています。
この様な場合、絞り(アイリス)
を調整して明るさの調整ができますが、絞りを開放にしても明るい映像が得られない場合に、
「ゲイン(AGC)」の レベル(度合い)を設定をします。
「ゲイン」による明るさ調整は万能か?
イメージセンサーの出力信号には、イメージセンサーを構成している素子の発熱、画素欠陥等
の素子の異常により発生した不要な電気信号成分(N:ノイズ)が含まれています。
被写体の
光はレンズを通してイメージセンサーに取込まれアナログの電気信号に変換され、ゲイン(増
幅)してデジタル信号に変換されますが、不要なノイズ成分も増幅されますので、暗い映像を
明るくする為に、ゲイン(AGC)のレベル(度合い)を上げ過ぎるとノイズ(高感度ノイズ)
が発生し画面がザラザラして荒くなったり、
画面上に変な色(赤、緑、青)が出る場合があり
ますので、必要以上にゲイン(AGC)のレベル(度合い)を上げることは避けるべきです。
尚、イメージセンサーの電気出力信号に含まれる純粋な電気信号(S:シグナル)とノイズ(N)
との比(S/N<比:単位はdb)はイメージセンサーの性能評価の一つに利用され一般的にS/N
比が50db以上が理想とされています。S/N比数値が高い程ノイズが少ない映像品質が得られ
高い評価になりますので、ゲイン(AGC)のレベル(度合い)を上げる場合に有利になります。
「ゲイン」レベルの適正値はあるの?
初めて使用する防犯監視カメラには工場出荷時に設定された初期値 (デフォルト値)が設定さ
れていますが、カメラの設置環境の撮影条件に初期値が合わない場合があり
カメラの設置環境
に合わせて初期値の見直しが必要です。日中撮影と夜間撮影の各条件に適用したゲイン(AGC)
のレベル(度合い)を確認するためには、カメラを設置した状態でモニターの画像を見ながら
ゲイン(AGC)のレベル(度合い)値を変更し日中と夜間の両方の撮影条件を許容できるレベル
(度合い)の値を判定する必要があります。
ゲイン(AGC)のレベル(度合い)決定時に考慮するポイント
■日中映像:
晴れ、曇り、雨の日の屋外、昼間のオフィスなどである程度の明かりが得られる
⇒ 必要以上にゲイン(AGC)のレベル(度合い)を高くしない
■夜間映像:月明り、常夜灯などである程度の明かりが得られる
⇒ 高感度ノイズの程度を確認しながらゲイン(AGC)のレベル(度合い)を調整する
■まとめ: AGCのレベル判断に関わるポイント■
1:画素数が同じなら、大型のセンサーの方が受光部が大きく取れるので感度が向上する。
2:S/N比の数値が高いほど高感度ノイズの発生が低くノイズの少ない映像が得られやすい。
3:AGCの初期値(デフォルト値)は、カメラを設置した時の環境に適合しない場合がある。
4:カメラの設置環境下で実際に映像を確認しながらゲインのレベルを判定する。
5:機種毎にゲイン(AGC)の感度が異なるため、ゲインレベルの数値に惑わされない。
6:ノイズの発生を抑制するため、必要以上にゲインレベルを高く上げない。
7:カメラには撮影映像をより鮮明にするために以下のような様々な機能が備わっているので
それらを組み合わせて有効に活用する。

<撮影映像を鮮明にする機能の一例>
■AWB(オートホワイトバランス):
カメラは周囲の環境光の変化に応じて、リアルタイムで自動的に白い被写体は白く映ることを基準により自然な
色合いで撮影できるよう補正する機能
■ALC(自動光量制御):
電子制御の自動絞りで被写体の明るさの変化に対応じて入光量を自動的に調整する機能
■ELC(電子光量制御):
イメージセンサーの電子シャッター機能によって、入射光量に合わせて素子出力レベルを自動制御する機能
■BRIGHTNESS(輝度):
映像の明るさを調整します
■SENS-UP(電子感度アップ):
夜間等低照度環境下の撮影時、シャッター速度を遅くして光を蓄積し映像を明るくする機能
※尚、動きの速いスピードの被写体の映像は動体ブレが発生し映像の識別が困難になる場合があります。
■DNR(デジタルノイズリダクション):
低照度下の撮影時などに発生するノイズをデジタル処理で低減する機能
■ACE(階調補正機能):
映像内の明暗差を補正して、白飛びや黒潰れを抑制する階調補正機能
■WDR(ワイドダイナミックレンジ):
映像全体の階調を適切に整え、より鮮明な映像が得られる機能
■BLC(逆光補正):
映像内に指定したエリアを重点的に測光し、狙った被写体を適正露出で撮影する機能
■DEFOG(アンチフォグ):
霧が立ち込めて画面全体にモヤがかかった様な状態の時、デジタル画像処理で白く霞んだ視界を明瞭に改善する機能
■SHARPNESS(輪郭強調):
モニター画面の輪郭を強調し映像がシャープに見える補正をします。
※尚、映像によりノイズが発生する場合があります。